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長編小説メイキング

長編のお話を書く時はこんな感じにやってます!というのを纏めてみました。何かしら参考になれば幸いです。

■使用ツール

プロット→Art of Words          ※フリーソフトです。情報を纏めやすく、長編を書くにはとても便利!

執筆→Microsoft Office Word2013

日程→Microsoft Office Excel2013

Little World Embryo ってどんなお話?

このメイキングでは、Little World Embryoという二次創作小説を例にしています。

■ラグナロクオンラインというMMORPGに登場するダンジョン「生体工学研究所」。

 そこに囚われ利用されている、人体実験の被害者達が主役のパラレルIFストーリー。

 

■主な登場人物

・エミュール=プラメール 人体実験の被害者である少年。生前は幼馴染のセリア=アルデに好意を寄せていた。

・チェン=リウ 人体実験の被害者少年その2。エミュールからは恋敵と見做されていたが、本人は敵対しない友人関係を望んでいた。

・セリア=アルデ 人体実験の被害者である少女。チェンに想いを寄せており、エミュールの好意に気付いていなかった。

■作品紹介文

記憶を失くした少年、エミュール=プラメール。

エミュールはかつての友人と語るチェン=リウの援助を得ながら、自宅で穏やかな療養生活を送っていた。

親切な友人にすっかり心を開いていたエミュールであったが、彼はやがて過去の自分がチェンを嫌っていたことを知る。
 
「月並みの友人関係を築くことが積年の望みだった」
 
そう打ち明けたチェンに対し、密かに罪悪感を抱くエミュール。しかし同時に、チェンの厚意についても疑問を覚え始める。

彼を信用してはいけないような理由が、どこかにあったのでは――?
 
積み重なった不信感はやがて、エミュールを一つの真実に導いていく。

大まかなあらすじとしては、実験体であったエミュールがセリアを救うため、現実とは異なる世界を創造して、仲間ごとその世界に閉じ込める。

という一つの事件を描くお話になっております。

その世界から脱出する為には創造主であるエミュールの協力が必要不可欠なのですが、本人が記憶を失ってしまっている為に、仲間たちは軟禁状態を余儀なく

されます。現実に戻ろうとする仲間たちでしたが、現実に戻れば、彼らは実験体として殺戮兵器の役目をこなす日々に逆戻りしてしまいます。

エミュールが創造した世界は小さいながらも生きていくぶんに不自由なく、現実に戻ることは本当に幸せと言えるのか……疑問に感じたチェンはやがて、

エミュールが記憶を取り戻すことなくこの世界に留まり続ける方が幸福なのではと考え始め、記憶を亡くしたエミュールの味方をするようになります。

完成品はA6サイズ244ページ、文字数は10万字くらいです。

STEP1 着想→妄想

①着想を得る

「話を書こう!」と思うに至る、最初のきっかけですね。

ふと浮かんだシーンの映像だったり、思い付いた脳内設定の昇華だったり色々あると思います。

今回のお話の場合、某小型犬アーティストの有名曲「ロビン○ン」の歌詞の一節がきっかけでした。

誰も触れない二人だけの国……ね!

「外部から干渉できない世界を作り上げ、そこに引きこもるエミュール」

というのが最初に生まれたイメージでした。暴走して人に迷惑をかけるエミュールくんが性癖なんだ。

②最初のイメージを膨らませる

「自分の世界に引き篭もるエミュール」

「元の世界に戻ろうと奮闘する仲間達」

「エミュールが創った世界はデタラメ」などなど、思い浮かんだ情景や設定を頭の片隅に留めておきます。

③設定を煮詰めてパートナーを決める

着想から得たテーマが「エミュールが創り上げた二人だけの世界」なので、パートナーをセリアにするかチェンにするか決めなければなりません。

いくらエミュールが未熟な少年であっても、仲間を巻き込んでの引きこもり騒動を起こすにはそれなりの理由が必要になります。

彼が暴走するとしたら、やはりセリアがきっかけになるでしょう。現実を投げ捨て、非現実の世界に逃げ込むことがあるとしたら、セリアを失って悲しみに

暮れた時なのでは、と考えた私はセリアの消失を暴走のきっかけに据えることにしました。

そしてセリアの消失を前提にしたことで、パートナーは残されたチェンに決まりました。

④パートナーが決まったところで、話の着地点をいくつか考える

エミュールが創造世界に引き篭った時チェンはどう行動するかを考えながら、結末を仮決定します。

私の中でチェンは協調性がある方なので、仲間が現実に戻る選択した時はそれに従うだろうと考えます。

また、仲間に迷惑をかけるエミュールをよく思わないでしょう。叱ってでも過ちを正そうとしてくれるタイプです。

しかしそれは仲間に迷惑が及ぶ場合に限った話であり、迷惑を被る対象が自分だけならば、自分を犠牲にしてでも友人の幸福を願える優しい子でもあります。

そこで被害者が自分のみとなった時、チェンは「セリアを失ったエミュール」に対し同情的になるだろうと考えました。

エミュールの現実逃避を認め、一人の友人として創造世界に居残る。それをチェンの目的としました。

パートナーであるチェンがエミュールを現実に連れ戻さない選択をする以上、迎えられる結末は

・目的は果たされ、二人は創造世界で永遠を過ごす

・何らかの原因で不本意ながら創造世界は崩壊する ……のどちらかとなります。

⑤エミュールの行動を踏まえて結末を決定する

どれだけチェンが尽力しても、エミュールはチェンの厚意を理解しない。

彼らにはすれ違っているイメージがあるので、チェンが最善を尽くしたとしても、エミュールが原因で上手くいかなくなるだろうと考えました。

ここで創造世界の崩壊を止められなかったチェンと、チェンを疑って崩壊を招いたことを後悔するエミュールのビジョンが浮かび、

これがそのままラストシーンとなります。

STEP2 脳内妄想をメモ帳に書き起こす

STEP1では「エミュールの暴走」→「世界創造」→「巻き込まれたチェン」→「世界崩壊」と、ざっくりしたあらすじを決めました。

ここから細かいストーリーを考えていきます。思い浮かんだシーンなどは忘れないようメモ帳に書いておきます。

 

下の画像はスマホのメモ帳に実際に書いていたものです。

初期設定ですね。煮詰める前なので、冒頭のあらすじも本文の二章部分までしか書かれていません。

メモを全てスクショすると3倍くらいの画像量になってしまうので、4枚で打ち止めにしています。

 

こんな調子で創造世界が崩壊するまでの流れを書いていますが、初期設定ではチェンとエミュールの二人しか登場人物しかいなかったり、エミュールが記憶を

取り戻してしまうきっかけがチェンのうっかりだったり、世界崩壊の条件が「屋敷から出ること」という謎条件だったりして、完成版とはかなり違う内容に

なっております。

タイトルはあらすじが浮かんだ時点で決めることが多いです。今回も初期設定でつけた仮タイトルをそのまま使うことになりました。

このメモ書きをベースにしながら、いよいよプロットを作り込んでいきます!

STEP3 ArtOfWordsを使ってプロットを考える

Art of Wordsは長めのお話を書くには非常に便利なフリーソフトです。

「執筆」「登場人物」「アイテム」「展開」「時系列」など、設定を細かく書き込むことができます。

「執筆」ページは会話文だけ抽出できたり、特定のキャラのセリフだけソートしたり、章ごとに分類するといった便利機能が満載なのですが、

私は本文をWordに直接書き込んでしまうので、ネタ整理用のメモ帳として使っております。

また「時系列」は分刻みで書き込める優れものなのですが、私が書くお話はだいたい「三日後」とか「二ヶ月後」とか時の流れがアバウトなので

ほとんど使ったことがありません!(宝の持ち腐れ)

上の画像は最終的に保存されていた執筆ページ。使いこなせない時系列ページに代わって、無造作に時系列が書かれております。

このお話は前半部分がエミュール視点、後半部分がチェン視点という構造になっている為に、一部の会話シーンをそれぞれの視点で書いているのですが、

実際の会話が一語一句違わないかチェックする為に該当部分がコピペされております。本当にメモ帳代わり…!

①真っ白なAoWファイルを開いたら、まずは執筆ページ(メモ帳)に設定を打ち込んで、一つずつ辻褄合わせをしていきます。

・エミュールが暴走して世界を創造したのは、セリアを失くしたから→セリアが消失した理由は?→人体実験の阻止を目論んだため

・エミュールは過去の記憶を失くしている→なぜ記憶がないのか→自身の記憶を世界創造の触媒に用いたため

・チェンはエミュールの世界を守ろうと尽力するが、エミュールに疑われて失敗する→なぜ疑われたのか→エミュールが疑心暗鬼に陥ったため

②続けて初期設定を、自分が納得できる設定に改変&置き換えていきます。

・エミュールが記憶を取り戻すきっかけはチェンのうっかりミス→守りたいと考えてる割に軽率では?→本人に会わせる方が良い→セリアの魂を登場させる?

・創造世界が崩壊する鍵はエミュールが屋敷から出ること→エミュールは創造世界のエンブリオとして転生するので、屋敷を飼育ポッドに見立てれば、生命を維持できないという理由で辻褄合わせができる

しかし「エミュールを屋敷の外に出したら終わり」という条件はチェンにとってあまりにも厳しく、加えてエミュールが屋敷の外を創る意味もなくなってしまうため、ひとまずは初期設定を破棄して、創造世界が崩壊する条件を練り直すことにしました。

偶発的な崩壊は難しそうだということで、創造主であるエミュールが自分の手で世界を壊すシナリオに路線を変更。

今度は「エミュールが自ら世界を壊す理由」を考える必要が出てきます。

献身的だったチェンを解放したい、という理由では、チェンを疑った展開と矛盾が生じてしまう上、追放すれば良いという話になるので壊す必要がありません。

 

世界の崩壊はエミュールの死と同義、という設定を組み込む為には、エミュールが命を投げ打ってでも助けたいチェン以外の登場人物が必要になります。

そこで初期では登場予定の無かったセリアが、魂という形でメインキャラの一人に加わることになりました。

設定をどんどん煮詰めていきます。

今回は記憶を失い全てを忘れているエミュールと、事情を知っていてエミュールの記憶が戻らないよう奮闘するチェンのお話になります。

なので、前半は謎かけパートとしてエミュール視点で進め、後半は謎解きパートとしてチェン視点で進めることにしました。

セリアとチェンの二人だけを創造世界に連れ込むのは不自然なので、禁忌の研究所メンバー全員を巻き込む方向で細かく考えていきます。

最終的にチェンだけが残る形になる為、エミュールがチェンに心を開くためのエピソードを幾つか混ぜる、といった感じの流れに決めました。

細かい部分を纏めて書き出したものがこちら。

長編を書く時は、設定が煮詰まるまで本文に取り掛からないようにしています。

本文執筆中に矛盾や疑問点を見つけてしまっても、文章量が多いために書き直す時間がないからです。

 

なので自分の設定には徹底的に疑問を投げ掛け、本文を書き始める前に疑問や矛盾を一つ残らず潰しておきます。

私は展開のページに辻褄合わせ考察用という項目を作って、こういった風に無作為に書き出すことが多いです↓

今読むと何言ってんだこいつ感があるぐらいごちゃごちゃしてますが……

自分が理解できればいいので、誤字とか誤変換とか気にせず書き殴ります。

④今回の話に必要そうなキャラ設定を書き出す。

登場人物の項目では、キャラがブレない程度に抑えておきたい設定や作中での変化を書き込みます。

過去編の場合、当時の年齢や身長体重を書いておくと何かと便利です。

研究員はいわゆるモブなんですが、わざわざ項目を用意したのは、名前や外見などをメモしておくためです。一人称や二人称を書くこともあります。

上はセリアの情報ページ。

今回は設定も制限も多かったので、整理も兼ねて細かく書き出しています。

上はエミュールの情報ページ。設定を詰め込みすぎた為に私自身混乱し、その度に書き出して整理した記憶があります。

プロット段階ではエンブリオを胚と表記していました。胚と書いてエンブリオと読む、そんな厨二的野望はレイアウトの関係で崩れ去ったのでした。

まだまだプロットのターン!!

設定と登場人物を纏めたら、いよいよ「展開」ページで具体的な流れを決めていきます。

こんな感じで、私は章ごとに項目を分けて書いています。

朝食シーンは初期設定のメモ帳に書いたので具体的なやり取りは省略しています。

展開では会話文を書いたり大まかな流れを書いたり、本文で書いておきたいポイントをメモしたり。

こちらは三章のプロット。具体的な情景が浮かんでいる時は、細く書き込んでおきます(本文を書く頃には忘れているので)

「展開」のプロットがエンディングまで書けたら、情報を整理しつつスケジュールを組みます。

STEP4 日程を組む

スケジュールはエクセルで適当に作ってます。全ての土日を休み扱いにして、なるべく日程に余裕を持たせます。

土日休みにしていますが何か遭った時の貯金日が欲しいので、基本的には土日も書き進めます。(ほぼ予定通りに書けないので可能な限り前倒しする)

今回のお話の場合、11/11から書き始めているので入稿まで4ヶ月弱かかりました。私は書くのが遅いのでかなり余裕を持たせないといけない。(つらい)

STEP5 本文を最後まで書く

作ったプロットを見ながらWordに打ち込んでいきます。私は最初から順番に書いていきます。

話の流れは既に決まっているのであとは作業なのですが、これがとにかくつらいです。

決められたレールに沿ってお話を書くということは、「うおお!こんな胸熱なシーンが浮かんでしまったぜ!」という勢いが、プロットを練る段階で出尽くしていることになるので「書いていて楽しい」という状態がほとんど訪れないんですね(少なくとも私は)。

むしろ結末が決まっているぶん「彼らはバッドエンドに向かっているんだ」としんどくなることが多いです。

今回のお話のように6章構成の場合、1-2章の段階では「ゴールが遠い」と気が遠くなってしまうことも多々……。

このつらい執筆タイムを乗り越える為には、愛と時間と根性と、それから適度な自惚れが必要なんじゃないかなと思います。

時間をかけてみっちり考えたプロットに目を通して、その内容に自信が持てれば持てるほど「これを書き上げて、日の目を見せてあげなきゃもったいない」

という思いが湧きます。

もちろん「この話は本当に面白いのだろうか」「わかりづらくないだろうか」という不安は一定周期でやってくるのですが、

それを払い除けて書き続ける力をくれる「自信を持てるプロット」は、お話を書く上でかなり大切なのです。

と言いつつ、「楽しみにしています」の一言が何よりの活力だったりする私です(*ノノ)

STEP6 推敲・校正・ルビ振り作業

エンディングまで書けたら、半日~1日ほど置いてから推敲を始めます。

私の場合、1回目の原稿というのは「こまかく書き出したプロット」のようなもので、お絵かきでいうところの下書き状態です。

とても人様に見せられる文章ではありません。なので、推敲ではほぼ全文言い回しを書き換えます。

話の筋は変えませんが、描写を丁寧に書き換えたり変な日本語を抹消していく作業です。

まっさらな原稿用紙に文章を生み出すよりは必要なエネルギーが少ないので、全文書き換えても初稿ほど時間はかかりません。

 

ちなみに上のスケジュールはかなり無謀です。ぶっ飛ばしたい。

一日で10万字のルビ振りは無謀なので、最低3日は欲しいです。この時は貯金日が多かったので、1回目の原稿が予定より早く終わっていました。

推敲1回目:1-2週間 ほとんどの言い回しを変えるのでそこそこ時間がかかります。

推敲2回目:1週間 全体の3分の1くらいの表現を書き換えます。直したいと思える部分は1回目と比べると少ないです。

推敲3回目:3日 気になる言い回しを直します。直したいと思える部分はかなり減ります。

校正:1日 校正機能を使って誤字脱字チェックします。これは30分もかかりません。

ルビ:3日 どこにルビを振るか決めるのは自分なので意外と時間がかかります。

こんな感じで、長編ならば推敲・校正・ルビの工程に1ヶ月は欲しいです。

入稿まで時間があれば、ひたすら読み返して誤字を探したり変な言い回しを修正していきます。

同じ話を5回も6回も続けて読むので頭がおかしくなります。しかし誤字脱字絶対潰すという強い意志で乗り越えます。

番外編 表紙や目次、扉絵

表紙や目次、扉絵といったイラスト作業はいつも、プロットが出来上がった段階(本文を書き始める前)に作成します。

本文は締め切りギリギリまで書いていることが多いので、後回しにするほど余裕がなくなってしまうからです!

とても長い記事になってしまいましたが、ここまで読んでくださいましてどうもありがとうございました。

このメイキングが長編小説を書かれる方の参考になれば幸いです。

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